原産地と気候の特徴
現在知られているハーブたちは、改良を加えられ広まったものもあるのですが、その歴史は浅く大部分が野生種に近いです。
そのため、ハーブの原産地を知りその気候や風土を理解することが、ハーブ栽培の役に立ちます。
ハーブの原産地は、①地中海沿岸タイプ、②ヨーロッパ中緯度地帯タイプ、③東南アジア&中米タイプ、④東アジア&日本タイプの4つに大きく分けることができます。
地域によって気候が全く異なるため、ハーブを原産地に合わせてさいばいしようとするとたいへんですが、野生種に近く強健なため、大雑把に言うと「夏の高温多湿と冬の寒冷に気を付け、ハーブによっては水を与え過ぎなければ良い」ということになります。
参考に東京の平均気温と年間降水量も載せてみましたので、他地域と比較してみてください。
①地中海沿岸タイプ
栽培難易度:★
気候:夏は涼しく、冬は温暖
乾湿:乾燥気味
ハーブ:オリーブ、ラベンダー、ローズマリー、タイム(木立ち性)、セージ、コリアンダー、パセリ、マジョラム、マロウ、フレンチタラゴン、サントリナ
地中海沿岸は、偏西風や暖流の影響で冬が7~8℃と暖かく、夏は20~25℃と涼しく乾燥しています。
偏西風とは恒常風の一種で、地球の自転により北緯または南緯30度から60度付近にかけて常に吹いている西寄りの風のことです。
夏の降水量は極めて少なく冬はやや多いのですが、代表的な植物にオリーブがあるように、地中海沿岸の植物は葉が堅く毛が生えていたり乾燥に強い構造を持っています。
そのため、このタイプを日本で育てる場合には、梅雨から夏にかけての高温多湿に気を付けることが大切です。
南アフリカ原産のセンテッドゼラニウムもこのタイプに近いですが、寒さに弱いため霜や雪に当てない工夫が必要となります。
②ヨーロッパ中緯度地帯タイプ
栽培難易度:★
気候:夏は涼しく、冬は寒い
乾湿:乾燥気味
ハーブ:ミント、カモミール、タイム、ロシアンタラゴン、タンジー、アンゼリカ、ルバーブ、ホップ
ヨーロッパ中緯度タイプも偏西風の影響を受けているため、地中海沿岸タイプと似ています。
日本の梅雨から夏にかけてのじめじめした蒸し暑さは嫌いますが、冬の気温が若干低いためこの地方で育ったハーブは地中海沿岸タイプよりも寒さに強いです。
③東南アジア&中米タイプ
栽培難易度:★★
気候:夏、冬ともに暖かい
乾湿:夏、冬ともに多湿
ハーブ:バジル、レモングラス、レモンバーベナ、ナスタチウム、ジャスミン、ジンジャー
東南アジア&中米タイプは年平均気温が20度を越えており、午後になると連日スコールが降るため1年を通じて雨が多いです。
湿度が高く日射が豊富なため、この地方で育ったハーブは暑さや多湿には強いのですが、寒さを嫌います。
そのため、日本で育てる場合には秋からの防寒が必要になります。
④東アジア&日本タイプ
栽培難易度:★
気候:夏は暑く、冬は寒い
乾湿:雨期と乾期がある
ハーブ:シソ、サンショウ、ミツバ、ガーリック、アサツキ
季節風が吹くモンスーン気候で、冬と夏では卓越風向(ある地点での風向き)がほぼ正反対になるため対照的な気候を生じさせます。
夏は熱帯のように高温多湿となりますが、逆に冬は寒帯のように寒く乾燥気味となります。
日本も同じような環境にあるため、この地方のハーブを育てるのは比較的容易と言えるでしょう。