ポプリとは
ポプリは、ハーブやスパイス、香料を混ぜ合わせ、さらにそれをビンやポットの中で熟成させた室内香です。
ハーブやスパイスのほか、香りの良い木片や樹脂などを用いることもあり、数種類の材料をブレンドすることによって香りに複雑さが増し深みを出すことができます。
ポプリの語源はフランス語の「POT-POURRI」から来ていて、「料理(ごった煮料理)」や「混ぜる」を意味し、多様な材料を混ぜてつぼに入れて作ったことに由来しています。
主なポプリには、すべての材料を乾燥させて作るドライポプリ(英国風)と生乾きの材料に粗塩や黒砂糖を加えて保存処理をするモイストポプリ(フランス風)があります。
ドライポプリの作り方
ポプリ作りのために、特別に必要となるものはありません。材料を混ぜて熟成させるだけなので、手軽に作ることができます。
それだけでなく、花や葉、茎、実などを組み合わせて自分だけのオリジナルポプリを作ったり、香りだけでなく見た目でも楽しませてくれます。
材料
主材料としてローズやラベンダー、ジャスミン
など、副材料としてローズマリーやセージ、シナモンなどを準備します。香りだけではなく色どりも楽しめるので、もらった花束で乾燥してきたものをそのまま利用することもできます。
また、香りを長持ちさせるための保留剤、好みのエッセンシャルオイルもあったほうが良いでしょう。
ただし、ユリやクチナシは乾燥すると茶色に、朝顔やペチュニアは乾燥すると縮んでしまうのでポプリには向きません。パンジーやヒヤシンスなども乾燥するとクセの強い香りに変化してしまうので、好みが分かれるところです。
準備
材料となる花や葉っぱを乾燥させます。自然乾燥させて花や葉がパリパリになったら完成。自然乾燥が難しい場合は、電子レンジの600Wで1~2分かければ大丈夫です。
作り方
瓶や袋に材料を入れ、好きなエッセンシャルオイルを数滴加えます。その際、芳香を長く持たせるための保留剤(オリスルート(ニオイアヤメの根)が万能)を入れても良いでしょう。
あとは、密閉して2週間から1か月熟成させれば出来上がりです。
モイストポプリの作り方
モイストは英語で「湿った」という意味ですが、このモイストポプリでは粗塩や黒砂糖を保存料に用い、あとはドライポプリと同じ方法で作ります。
中世の時代にはスイート・ジャー(芳ばしいつぼ)と呼ばれていて、うまくブレンドしたモイストポプリは50年も香りが持続すると言われています。
【材料】
ドライポプリと同じく主材料・副材料を準備しますが、完全に乾かしきらない半乾きのものを使用します。そのほか、粗塩を2カップくらい用意してください。
黒砂糖を使う方法もありますが、塩で作ったモイストポプリの方が美しい仕上がりになります。
【作り方】
容器に塩を1~2センチ敷いて、その上に主原料を乗せます。さらにその上に塩を入れて1~2センチの層にし、蓋をして冷暗所に10日くらい寝かせます。全体を混ぜて副材料や保留剤を入れ、蓋をして1か月ほど熟成させれば完成です。
あるいは、混ぜずにポプリと塩の層を交互に積み重ねていく方法もあります。
ポプリのレシピ
ポプリは材料の組み合わせによって、さまざまな種類のものが楽しめます。ここでは、四季に合わせた春夏秋冬のポプリレシピを紹介します。
春のポプリ
主材料…ラベンダー、パンジー、フリージア、コーンフラワー、ピンクローズ
副材料…ローズマリー、セージ、ローズヒップ、レモンバーベナ、スイセン、
夏のポプリ
主材料…ジャスミン、マリーゴールド、スペアミント、シャクヤク、ピンクのローズ、
副材料…カモミール、リンデン、ペパーミント、シナモン、スペアミント、ローリエ
秋のポプリ
主材料…レモンバーベナ、カモミール、レモングラス、オレンジフラワー
副材料…ローズマリー、レモングラス、乳香、没薬、サンダルウッド、ジュニパーベリー
冬のポプリ
主材料…ラベンダー、シクラメン
副材料…ピンクのローズ、レモンバーム、ローズマリー、コーンフラワー
ポプリの歴史
16世紀イギリスで活躍した薬学博士ニコラス・カルペッパーの文献によると、前述した「POT-POURRI」が室内香という意味に使われ始めたのは、エリザベスⅠ世の時代(1533~1603)以降であると記されています。
エリザベスの時代は、イギリス海軍がスペインの無敵艦隊を破りまさに全盛期であり、国教を確立し、学芸・文化に加えて園芸熱も非常に高まりました。軍隊が他国へ遠征してはイギリスにない植物を持ち帰り、あらゆる種類を保有していったと伝えられています。
「ロミオとジュリエット」で有名な文豪シェークスピアも薬草に増資深かったため、特に女王の求愛を受け宮廷の庭園に薬としても役立つハーブをたくさん栽培していたようです。
また、当時流行していたペストの予防にもハーブが使われ、集会場の床にハーブをまき散らしたり窓辺に吊るしたりして殺菌・消毒にも利用されました。
エリザベス女王はラベンダーを非常に好み、ジャムにしたラベンダーをいつも食卓に欠かさず、戴冠式の時にも「ハーブで作ったタッジーマッジー(花束)」を持っていたと記録にあります。このような香り好きの女王の影響を受けて、宮廷婦人たちの間にも、ハーブや花の香りを楽しむ人が増えていきました。
1575年になると、イタリアから帰国したオックスフォードのエドワード伯爵が土産として献上した香り手袋や香りのスイートバッグが女王の気に入るところとなり、これをきっかけに宮廷内に流行、それが徐々に一般大衆へと普及していきました。
宮廷夫人たちは、自分の館にスティル・ルーム(香料貯蔵室)を設けてハーブや花の香りを抽出するようになり、自家製手作りの花の香りを上等な飾りのつぼに入れて楽しんだのですが、これがポプリの由来となりました。大英博物館には、当時のポプリつぼも保存されています。