ハーブの風味を残すためにも、肥料は控えめに
植物に与える栄養分言えば、すぐ肥料が思い浮かぶと思います。たくさん与えれば、そのぶん早く大きく育つ感じがします。
しかし、一般的にハーブは野生に近いものが多いため、肥料は控えめのほうがよいと言われています。実際、肥料がなくても十分育つハーブが多いです。
しかし、プランターなどで育てる場合は、どこまでも根を伸ばして養分を吸収するというわけにもいかないので、適宜肥料を与えたほうがよいです。
ただし、多すぎると葉ばかりが育ってしまったり、香りがなくなったり、ひどいときには枯れることもあるので注意して下さい。
肥料には、大きく分けて元肥と追肥があります。元肥は、植え付けや植え替え時に与える肥料、追肥は生長途中に追加で肥料を補うものです。
葉や茎の色が薄くなったり、害虫や病気に対する抵抗力が弱くなったら肥料不足のサイン。逆に、葉が焼けるような色になったり夏期に成長が止まるなどしたら肥料過剰のサイン。ハーブの様子はなるべくこまめにチェックしてあげることが大切です。
ハーブ栽培は、肥料不足より肥料過多になりやすい
肥料の3大要素とリービッヒの最小律
肥料には、チッソ(N)・リンサン(P)・カリ(K)の3大要素と呼ばれるものがあります。簡単に言うと、チッソは葉を茂らせ、リン酸は花や実を育て、カリは根を育てます。
19世紀、ドイツの化学者であるユストゥス・フォン・リービッヒ男爵が、植物を燃やしたあとの残りカスが窒素(チッソ)・リン酸(リンサン)・カリウム(カリ)だったことから三要素説を提唱、化学肥料の元も作っているため、「農芸化学の父」とも称されています。
チッソ(N)・リンサン(P)・カリ(K)が肥料の3大要素
リービッヒは、植物は窒素・リン酸・カリウムの3要素が必須であるとし、生長の度合いは3要素の中でもっともあたえられる量の少ない養分によってのみ影響され、その他2要素がいくら多くても生長への影響はないと主張しました。のちに、養分以外の水・日光・大気などの条件も追加されましたが、これをリービッヒの最小律(さいしょうりつ)と言います。
なお、チッソ(N)・リンサン(P)・カリ(K)の3大要素は工場の廃物などから大量に取れるので、園芸店では比較的安価で販売されています。また、枯れた葉っぱなどはチッソ分を多く含むため、庭先で栽培した場合にチッソ分が急に不足することはあまりありません。むしろチッソ過多になってしまうことが多いので、リンサンとカリのバランスを見ながら与えます。
その他、土壌改良・ph調整として苦土石灰やカルシウム・マグネシウムを与えるとなお良いでしょう。
肥料の三大要素(有機肥料)
チッソ(N) | リンサン(P) | カリ(K) |
葉を育てます。 (与えすぎると葉ばかり茂ります) | 花や実を育てます。 | 根を育てます。 病気予防にも。 |
油粕・尿素・魚粕 | 米ぬか・鶏糞・骨粉 | 草木灰 |
化学肥料と有機肥料
肥料は、化学肥料と有機肥料に大きく分けられます。
まず、化学肥料には、肥料成分がひとつだけのもの(単肥肥料)と、チッソ・リンサン・カリの3要素が一緒に含まれている複合肥料があります。複合肥料は、成分量が(N:P:K=6:3:2)というように重量比で記入されています。
化学肥料は、肥料の成分量が高く植物がそのまま吸収できるように科学的に作られているため効き目も早くて即効性があるのですが、使い方を誤るとハーブを傷めることがありますので注意して下さい。複合肥料には粒状で表面がコーティングされた、効き方が穏やかな緩効性のものがありますので、鉢植えの追肥などにはよいでしょう。
一方、有機肥料は、化学肥料よりも肥料の成分量が少ないのですが、肥料の効き方が緩やか(穏効性)で、多少多く施してもハーブを傷めることが少なく、使いやすい肥料です。微量要素も含まれていることが多く、土質の改良にも役立ちます。
化学肥料のように即効性はないのですが、野菜でも、有機肥料で育てた「有機野菜」が売られているように、植物の栄養バランスが良くなることが多いです。
穏効性なので、肥料の調整に手間がかかってやや大変ですが、せっかくハーブ栽培にチャレンジするのですから、できれば有機栽培で育ててみたいものです。
化学肥料…簡単で即効性重視。無機肥料であるため、土壌の微生物が育たない。
有機肥料…手間がかかる穏効性。土壌の微生物には最適、環境にも優しい。
多湿を嫌うハーブの水やりは、まずコツをつかむことが大切
水やりの量は、ハーブの種類や大きさ、土、容器、季節によってその都度変わりますし、特にハーブは、極端に多湿を嫌うものもあるので十分な注意が必要です。
水やりのタイミングは、土の表面が白っぽく乾いてきたころがベストです。
最初は乾くまであげないとかわいそうに思うかもしれませんが、植物にとってはかえって空気を取り入れることができるので好都合なのです。
乾くまで水を与えない分、与えるときは鉢の緑と土の間が水でいっぱいになるくらいにたっぷりと与えます。その際、葉や花に水がかからないように注意し、土に流し込むように与えてください。水は表面から引いても、そこから流れ出さない場合はさらに与えます。
ただし、根腐れするので、鉢皿に水をためてはいけません。また、2~3日家を空ける時はウォーターキーパーなど自動給水用具を使うとよいでしょう。
水のやり忘れよりむしろやりすぎによる根腐れに注意