水蒸気蒸留法
精油の抽出方法には、主に水蒸気蒸留法、圧搾法、油脂吸着法、有機溶剤抽出法の4つがあります。
その中でも、水蒸気蒸留法が装置が安価で簡単に作れる水蒸気蒸留法が最も多く利用されています。
これはハーブを蒸して精油を得る方法で、原料となるハーブを蒸留釜に入れて水蒸気を当て、ハーブの精油を蒸発させた後、その水蒸気を冷却管に通して冷やすことで精油に戻します。
水より軽い精油は水面に浮くので最後に精油だけを集めるのですが、残った水にも水溶性の芳香成分が含まれていて良い香りがするので、これも芳香蒸留水(フローラルウォーター)として利用することができます。
ただし、水蒸気蒸留法はハーブを熱と水にさらすため、本来の香りや成分が失われてこの方法が適さないものもあります。
圧搾法
果皮などを機械で圧搾したあと遠心法で分離して精油を得る方法で、主に柑橘類の果皮から精油を得る場合に用いられます。
圧搾法では、熱することなく精油を得ることができるので、水蒸気蒸留法に見られる熱による精油成分の変化はほとんどなく、自然のままの香りが得られます。
ただし、圧搾法で製造された精油は原料の搾りカスなどの不純物が混入したり変化しやすい成分が多く含まれるので、精油成分の劣化が早いことに注意する必要があります。
なお、昔は手で果皮を圧搾してスポンジに吸わせて精油を回収していました。
油脂吸着法
牛脂(ヘット)や豚脂(ラード)などの油脂に芳香成分を吸着させる方法で、ローズやジャスミンなどの繊細な花の香りを得るのに適しています。
古くから行われていた方法なのですが、とても手間がかかるため現在ではほとんど行われていません。
油脂吸着法には、常温で固型油脂の上に花などを並べる冷浸法(アンフルラージュ)と、60~70度に加熱した油脂に花などを浸す温浸法(マセレーション)があります。
この方法で芳香成分を高濃度に吸着し、飽和状態になった油脂を「ポマード」、エチルアルコールを使用して芳香成分を溶かし出し、エチルアルコールを除いて最終的に得られたものを「アブソリュート」と呼んでいます。
有機溶剤抽出法
石油エーテル、ヘキサン、ベンゼンなどの揮発性有機溶剤を用いた方法で、油脂吸着法に替わって利用され始めました。
溶剤釜にハーブを入れ、常温で溶剤に芳香成分を溶かし出します。ハーブの中には天然のワックス成分などがありこれも一緒に溶け出てきます。
その後、ハーブと溶剤を取り除くと、芳香成分とワックス成分などが含まれた半固体状の「コンクリート」が残ります。
これにエチルアルコールを使って芳香成分を溶かし出し、ワックス成分などを分離したあとエチルアルコールを除いて最終的に得られたものを「アブソリュート」と呼んでいます。現在のアブソリュートはほとんどがこの方法で得られたものです。
また、主に樹脂などから有機溶剤抽出法で芳香成分を取り出したものを「レジノイド」と言い、芳香を持続させる保留剤としても使われます。
超臨界流体抽出法
近年新しく開発された抽出法の一つで、主に二酸化炭素などの液化ガスを溶剤として用います。
二酸化炭素などに高圧力を加えると、気体と液体の中間である流体状態(超臨界状態)になるのですが、この超臨界状態の流体は気体と液体の両方の性質を持つため、ハーブによく浸透・拡散して芳香成分を取り込むことができます。
その後、流体の圧力を戻すと液化ガスは気化して芳香成分だけが残り、これを「エキストラクト」と呼んでいます。
超臨界流体抽出法では、製造過程で芳香成分が変化しないため、ハーブをのものに近い香りを得ることができます。
揮発性有機溶剤を用いた抽出法に比べると安全性が高いという利点はありますが、高価な装置が必要となるためあまり一般的ではありません。