嗅覚は、もっとも原始的な感覚
人間には、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の五感がありますが、中でも嗅覚は人間の五感の中でも化学的な感覚と呼ばれていて、食べ物の良し悪しや生まれたての赤ちゃんが母親を認知したりするのになくてはならない器官となっています。
嗅覚は他の感覚と異なり、ある香りをかいだあとそれが何の香りかを考える前に、好きか嫌いか、心地よいか不快かを連想する反応が起きるため、「原始的」な感覚と言われることもあります。
なお、五感のうちで光や音、熱などを感じる視覚・聴覚・触角は物理的な感覚と呼ばれ、味覚と嗅覚は化学的な感覚と呼ばれています。
嗅覚のプルースト効果 (プルースト現象)
嗅覚は、視覚や聴覚に比べると記憶を呼び起こす作用が強く、特定の匂いや香りがそれにまつわる記憶を呼び覚ますことは「プルースト効果(プルースト現象)」と言われています。
さらに嗅覚は睡眠中でも休むことなく、トランプを使った神経衰弱の実験では、睡眠中にバラの香りを嗅がなかったグループの正解率が86%だったのに対し、嗅いだグループの正解率は97.2%だったとの実験結果があります。
また、通常の状態でのテストの正解率が75%だったのに対し、 香り付きの消しゴムを嗅ぎながらテストすると正解率は83%になり、記憶力が1割以上アップしたとの実験結果もあります。
嗅覚と大脳辺縁系
人間の脳には、大脳辺縁系(本能や感情を司る)と大脳新皮質(理性や判断を司る)とが存在します。
生物が進化していくうえで、私たち人間は高度な知能・精神活動などを担う「大脳新皮質(だいのうしんひしつ)」を獲得、発達させてきました。
大脳新皮質のおかげで人間は理性を持ち、感情の暴走を止め様々な判断を下すことができます。
そして、視覚や聴覚は、刺激を受け入れる一次中枢(視覚野・聴覚野など)が大脳新皮質にあり、そこで認識された後に大脳辺縁系に伝わります。
ところが嗅覚は、刺激を受け入れる一次中枢が大脳辺縁系にあるため、先に大脳辺縁系に受け入れられあとから大脳新皮質で認識されます。
すると、私たちがにおいを嗅いだ時、それが何かを認識する前に、そのにおいが好きか嫌いか、あるいは心地よいか不快化という反応が先に生じます。
また、大脳新皮質には記憶を司る海馬もあるため、においが関連した記憶を呼び覚ますこともあるのです。これが、「プルースト効果(プルースト現象)」が起きる理由なのです。