精油が心身に作用する経路
アロマテラピーで精油(エッセンシャルオイル)を利用すれば、私たちはリラックスして気分転換できたり、あるいはトリートメントで美容に効果を発揮したり健康を維持したりすることができます。
とはいえ、一体この効果はどのようなメカニズムで私たちの体に作用しているのでしょうか?
アロマテラピーと言えばまず良い香りを嗅ぐことが挙げられるので、嗅覚を使っていることが分かります。
また、精油によるマッサージを行えば、皮膚を通じて効果が伝わっていっていることも分かります。
一般的には、アロマテラピーが人間の心と体に作用する経路は「①嗅覚」と「②血液循環(皮膚や呼吸器、消化器)」があると言われています。
①嗅覚による経路
精油を嗅いだ時の流れを追ってみましょう。
においを嗅いだ時、精油成分の分子は鼻の奥上部にあるにおいを感じる嗅上皮の粘膜に付着し、そこにある嗅細胞から出ている繊毛(嗅毛)に受容されます。
その嗅毛に精油成分の分子が受容されると、嗅細胞が興奮することにより嗅覚刺激が電気信号(インパルス)に変換されて嗅神経に伝わります。この嗅神経は、鼻と脳をつなぐ神経です。
その信号が脳に伝わり、嗅球、嗅索を経て大脳辺縁系(だいのうへんえんけい)に到達、最後に大脳皮質の嗅覚野に伝わって「におい」として認知されるのです。
②血液循環(皮膚や呼吸器、消化器)による経路
皮膚を通した循環
次に、精油成分がどのように皮膚から吸収されるのかを見てみましょう。
皮膚は、表皮やそれを覆う皮脂膜、多重構造の角質層があるため、通常であれば簡単には物質を通したりしません。
しかし、精油は成分が小さな分子構造をしているうえ油になじみやすい親和性であるため、比較的容易に皮膚を通過します。
トリートメント法などで皮膚に塗られた精油成分は、皮膚内に浸透し真皮にある末梢血管やリンパ管に入り、体内を循環することになります。
オーストリアの研究者たちによると、ラベンダー精油を入れたトリートメントオイルを皮膚に塗った場合、5分以内にラベンダー精油中のリナロールと酢酸リナリルが血液の中に検出されて、20分後に最高値となり90分以内にその大部分が血液中から消失したという研究成果が発表されています。
呼吸による循環
呼吸によって精油成分が取り入れられた場合は、肺の一番奥にある肺胞という酸素と二酸化炭素を交換する組織の薄い膜を通過して血管に入り、体内を循環します。
消化器による循環
消化器からの場合は、口の中、のど、食道、胃、小腸などの消化器粘膜から血管へ入り、血液循環によって全身を巡ります。
公益社団法人日本アロマ環境協会では、精油を飲むことやほかの食品と一緒に摂取することを薦めていません