【学 名】 | Matricaria necutita、Chamaemelum nobile |
【分 類】 | キク科・カミツレ属 |
【別 名】 | カミツレ、カミルレ、カモマイル |
【種 類】 | 一年草・多年草 |
【草 丈】 | 40cm~100cm |
【原産地】 | ヨーロッパ |
【精油成分】 | アズレン、テルペンアルコール、ノニル酸、カプリン酸 |
カモミールの特徴
古代エジプトでは最高のハーブ
古代エジプトではローマンカモミールを太陽神への捧げ物とし、治癒の秘薬、最高のハーブとしてたたえ、ギリシャでは、熱病や婦人病の治療薬として使われていました。
アングロサクソン人の神話では、カモミールは薬草の神ウォドン神がこの世に与えた9種の聖なるハーブの1つだとされており、イギリスで最も古くから知られていた薬用植物です。
属名の「Matricaria」はラテン語のマトリックス(子宮の意味)に由来し、古くから婦人病の治療薬として使われてきたことにちなんでします。
カモミールの花の芳香は、よくリンゴの香りに例えられます。
ギリシャ人が、カモミールを「カマイ・メロン」(地面のリンゴ)と呼んだのもそのためで、このカマイ・メロンからカモミールの英語名、カモマイルができています。
また、カモミールのスペイン語名マンサニージャ「manzanilla」も「リンゴ(manzana)のような(香りがある)もの」という意味になっています。
実際には、リンゴの香りと言われるとそう思えますが、言われなければ甘くて柔らかい香りだな、という印象。特に、全草から香りの出るローマンカモミールが良いです。
植物のお医者さん
カモミールは、「植物のお医者さん」と見なされてきました。近くに生えている植物を元気づけ健やかに保ってくれる力があるからです。
カモミールはデージーの仲間で、普通種デージーによく似ています。その上を歩くと芳香が立ち上るので、中世のころカモミールは床などに「まき散らす薬草」としてよく利用され、また庭園の小径などにも植えられたりしました。
1638年に書かれたウィリアム・ロースン著の造園書には、「テッサリアの神殿の森のごとく、広くてゆったりとした散歩道には、砂利と砂を敷き詰め、ベンチを設けて、カモミールを植えるとよい。心身ともに健康になるであろう」とあります。
また、逆境にあるものを激励する言葉に、「カモミールの苗床のごとく、踏まれるたびに成長せよ」というものがあります。
特にドイツでは子供たちの万能薬として有名
フランスやドイツで特に人気の高い理由は、子供たちの万能薬といえるからでしょう。民間薬として重宝されています。
いろいろな体の不調、特に女性特有の病気や神経障害に対する効果が知られ、更年期の不快も改善すると言われています。
また、優れた整肌作用、抗炎症作用、アレルギーを改善する作用は特筆すべきものがありますが、これは
精油にアズレン、ノニル酸、カプリン酸、テルペンアルコールなどの有効成分が含まれているからです。 この作用は、ローマンカモミールよりもジャーマンカモミールのほうが優れています。
発汗、駆風剤として感冒、リューマチに煎汁を飲むか浴湯料とされ、炎消作用があるので口腔炎や咽頭炎、痔や腫れ物の家庭薬に配合されています。
優れた抗炎症作用
アズレンに関してですが、アズレンはきわめて優れた抗炎剤として知られていて、多くの薬剤と化粧品類に用いられています。
アズレンは、単離すると濃い青色をした結晶になります。生の花の中にはなく、精油を蒸留する際に形成されますが、花を乾燥したときにも中にアズレンができます。
ローマンカモミールは約1パーセントの精油を含んでいますが、ジャーマンカモミールの場合には0.25パーセントほどです。ですが、ジャーマンカモミールの方がアズレンをより多く含有しています。
カモミールのエッセンスは比較的毒性が低く、抗炎症作用や癒傷作用、鎮静効果があることが、250年以上にわたって薬局方に載せられてきました。
抗アレルギー剤として、アレルギーのために生じた発疹に効き目があったり、火傷・結膜炎・皮膚炎・胃炎・下痢・腎炎などに用いると良いようです。
また、緩和な鎮痙剤・利尿剤としたり、喘息・気管支炎・膀胱炎にも効き目があります。
精神と美容に特筆すべき効果
さらに、カモミールは心と精神に良い効果を示します。
鎮静作用を示すとともに抗抑うつ効果を発揮するため、伝統的にヒステリーと各種の神経症に使われてきました。
古代エジプト人はカモミールを「怒り」に用いましたが、それ以来、薬草専門家はこれと同じやり方でカモミールを利用してきました。
カモミールはさまざまな皮膚の炎症に使用されますが、特に皮膚炎・過敏性の皮膚に有効で、炎症をおこした傷・潰瘍または腫れ物にも使うことができます。
こうしたいろいろな特性が組み合わさって、カモミールは火傷用のすばらしい薬剤になります。
また、カモミールは乾燥肌にも効果があります。特に肌に発赤があったり、肌が敏感であったりしたときに有効で、シャンプーや化粧品に配合されることも増えてきました。
毛髪をつやつやと輝かせる効果もあるため、シャンプーによく利用されますし、バラ・ゼラニウム・ラベンダーとよく融合するので、軽い爽快なバスオイルにもなります。
カモミールの育て方
ジャーマンカモミールとローマンカモミール
それぞれ、夏の暑さと乾燥に弱く、新芽とつぼみにアブラムシが発生することがあります。アブラムシを媒介するアリにも注意。また、うどん粉病にかかることもあるので、定期的に刈り込んで風通しを良くします。
水は、少しずつ回数多くやると土の表面が占めるだけで値が伸びないので、回数は少なくて良いので土が乾いたらたっぷり与えるようにします。
ジャーマンカモミールは1年草、ローマンカモミールは多年草なので、育て方が多少異なります。次に、分けて解説します。
ジャーマンカモミール
・真ん中が盛り上がってくる
・背丈70~100cmになる
・香りは花だけ
・ローマンに比べ薬効成分が多い
ローマンカモミール
・真ん中は盛り上がらない
・背丈は10~20cmほどと低い
・花だけでなく葉っぱも良い香り
・ローマンに比べ薬効成分は少ない
ジャーマンカモミールの育て方
ジャーマンカモミールは、いくつかある種類のカモミールの中でもっとも育てやすく、春か秋に直播で簡単に育てられます。
春まきは大きく育たずに開花し始めるのに対し、秋まきは冬を無事に越させれることでより丈夫に育ちます。
ただ、種がとても小さいため、ハーブ初心者の人は苗から育てるのがおすすめ。春に出回る苗は、前年の秋に種をまいて冬越しさせた苗なので、丈夫で育てやすいです。
高さ40~50㎝くらいになる一年草ですが、一度栽培すると翌年からはこぼれ種から自然と育っていきます。交雑しやすく、香りのないものなどが出てくる場合があるので、良くないものを見つけたら株ごと抜き取ります。
ジャーマンカモミールは植物のお医者さんと言われていて、まわりの植物を元気付け病気から守ります。花を収穫したあと、残った茎や葉は刻んですき込むとそれが優良な肥料になります。
ローマンカモミールの育て方
苗が小さいうちはジャーマンカモミールとそっくりですが、背丈は10~20㎝とほとんど大きくなりません。
写真では見分けが付きませんが、花だけでなく全草から良い香りが出ているので、苗を触るとすぐにローマンカモミールだと区別できます。
ローマンカモミールは多年草なので、春と秋に種をまく以外に株分けで増やすこともできます。
ジャーマンカモミールと異なり何年も育つことから、地植えするときはよく土を耕し、鉢植えの場合は横に広がるためやや広めの深い鉢にしましょう。ジャーマンカモミールと同様、交雑しやすいので性質が劣っているものを見つけたら抜き取ります。
ダイヤーズカモミール
ローマンカモミールの仲間には、八重咲きのもの、芝生に用いる花の咲かないもの(ノンフラワー種) 、舌状花が黄からオレンジ色で、染色や花壇に用いられるダイヤーズカモミールなどがあります。
ダイヤーズカモミールは、別名イエローカモマイルとも呼ばれています。主に染料用に利用されてきたため「ダイ」(染めるという意味)ヤーズの名前が付いています。
ローマンカモミールと同様多年草で、高さは1mほど。香りは劣りますが、鮮やかな黄色の花が広がるので、切り花や花壇へ植え付けるのに向いています。
質 問 と 回 答
Q. 自宅で咲いたカモミールの花を乾燥させ、ハーブティーにしたのですが、苦味が出てしまいます。
A. ローマンカモミールは、ティーにすると苦みが出ます。
ローマンカモミールは全草に香りがあり、背が低い多年草です。苦みはほとんどないジャーマンカモミールは、背が高く花のみに香りがあり、1年草です。