①はじめての人は、苗から育てると簡単
ハーブを種から撒いて苗を育てようとすると、発芽まで日数と手間がかかってしまうばかりではなく、せっかく種を撒いて毎日水をやったのにぜんぜん芽が出てこない、という経験をお持ちの方もいると思います。
それで、ハーブ作りは難しいと言ってハーブが嫌になってしまうのは、とても残念なことです。
なぜなら、ある程度成長したハーブはそれほど手間がかからないからす。そこで、はじめての方は、ハーブを苗から育てることをおすすめします。
種からハーブを育てることは、誰にとっても難しいものです。ハーブを種から育てるのは難しいとわりきって、苗を購入することから始めましょう。
春に苗を購入して植えつけると夏から秋まで収穫を楽しむことができ、花も見られます。ハーブ作りに慣れてきてから、種からのハーブ作りに挑戦してみてください。
むしろ、放っておいても育つような雑草並みに強いハーブが多いくらいで、この生命力の強さがハーブティーや料理に使った時、私たちの健康に役立っているのです。
もしハーブが、支柱で支えてあげて風よけを作り害虫も1匹残らず退治しないと育てられないような軟弱な植物であるのなら、生命力は弱く栄養価は少ないヒョロヒョロの植物ということになり、そんな植物をティーや料理に使っても健康への効果はほとんど期待できないでしょう。
つまり、ハーブと聞くと大切に育てなければいけない気がするのですが、実は逆で、生命力が強いので放っておいても育つくらいなのです。
生命力が強く収穫量が多いので値段が安いうえ我々の健康に役立つハーブに比べると、収穫量や採取量が少ないため必要以上に高額になっている健康食品というのは、実際にはあまり効果がないのではないかと個人的には考えています。
②ハーブの多くは日当たりが大好き
多くのハーブは日当たりが大好きで、一日中日が当たる場所でよく育ちます。
南向きの暖かい場所が理想的ですが、家庭では必ずしもすべて日当たりがよい場所とは限りません。
しかし、前述したようにハーブは生命力が強いので、半日程度日が当たる場所であればほとんどのハーブは育てられます。
種類によっては、日陰でもよく育つハーブがあります。ミント、チャービル、チャイブ、シソ、ソレル、スイートバイオレットなとは強い直射日光に弱く、むしろ日陰の方がよく育ちます。
③水やりはとてもラク
多くのハーブは乾燥に強く、過湿が苦手です。もともと乾燥気味の地中海地方が原産なので、むしろ少々乾燥気味にしたほうが、うまく育ちます。
地上なら、種まきから発芽までと、植え付け前後にだけ水をやれば、あとは放っておいて雨などの自然の状態に任せておいたほうがよく育ちます。
鉢植えなら、土の表面が乾いたら、たっぷり水をやるようにします。水をやればよく育つだろうと思って、毎日少しずつ水をやったのでは、根の周りが水浸しになってしまい根腐れが起き、かえって逆効果です。
水やりの回数は少なくてもよいから、土が乾いたら、鉢やプランターの底から水が流れ出るくらい、一度にたっぷり水をやります。
水をやるときは、花や葉にかけるのではなく、土にかけるようにします。花や葉に直接かけてしまうと、カビなどに侵されてしまうからです。
④寿命は種類によって異なる
ハーブは、種類によって寿命が違います。
ボリジ、バジル、ディルなどは、一年間のうちに発芽・開花して種を残すと枯れてしまう一年草です。
一方、パセリ、キャラウェイなどは、発芽して一年目は成長期間で、二年目に開花して種を残して枯れてしまうので二年草と呼ばれます。
これに対して、ミント、レモンバーム、オレガノ、フェンネル、ベルガモットなどは一度植えれば数年は生き続けます。これらのハーブは多年草または宿根草と呼ばれ、冬の間でも緑の葉が残っているものと、冬には地上部が枯れてしまうものがあります。
どちらにしても、多年草(宿根草)の場合は地下の根は冬の間も生きているので、春に再び地上に芽を出します。
ハーブの多くはこの多年草で、一度苗を植えつければあとは簡単な手入れをするだけで数年間栽培を楽しめます。
また、たとえ1~2年草のハーブでも、開花・結実してこぼれた種から自然に発芽して育ってくれるほど生命力の強いものが多いです。
ハーブ自体とても繁殖力が強いので、大抵のハーブはこぼれ種から勝手に増えます。むしろ、あまり過保護にしない方が良いのかもしれません。
⑤肥料はあまりいらない
ハーブはもともと、原産地の地中海沿岸のやせた土地で自生していたほど丈夫な植物なので、肥料にそれほど神経質になる必要はありません。
一般的に、肥料をやや控えめにした方がよりよいハーブが育つとも言われています。
種を撒くときや苗を植えつけるときに入れておく肥料(元肥)と、成長の途中に追加する肥料(追肥)、ハーブを収穫したあとに追加してやる肥料(礼肥)とをきちんとやれば十分です。
また、土に関してですが、市販の土にある赤玉土、黒土、腐葉土などを自分で混ぜ合わせて水はけ・水もちのよい土を作るのも面白いのですが、すぐに使えるのは「ハーブの土」や「プランターの土」という名前で売られている土です。
ハーブの多くは土の酸性度が強いとよく育たないので、ハーブを育てるには石灰で土の酸性を中和する必要がありますが、市販のハーブの土はこの点がよく考えられており、中には肥料分がある程度入っているものや、土のPHが調整されているものもあります。
はじめての方は、市販のハーブの土がお勧めです。
ただし、やや肥料分が多めに入っているものもあるので、肥料のやりすぎには注意してください。
⑥鉢植えか露地栽培か
ハーブを育てるからには、露地植え(地面に植えること)にしてのびのび育てたいものです。しかし、耐寒性のないハーブはそのままにしておくと冬には枯れてしまうため、すべてのハーブを露地植えにすることはできません。
逆に、鉢植えにしなければいけないハーブは、ベランダでも育てられる手ごろなハーブと言えるでしょう。
ハーブの中でも、アロエやステビア、センテッドゼラニウム、レモングラスは耐寒性がないため雪が積もると確実に弱ります。
雪が降り始めたばかりの時は平気そうに見えるのですが、一晩そのままにしておいただけで一気に弱ってしまうことが多々あるため、鉢植えにして移動できるようにした方が無難です。もちろん、雪が降らなくても気温が一桁台になると危険信号です。
一方、寒さに強いローズマリーやセージ、ミント、レモンバームは露地でも大丈夫です。ただし、露地植えの場合は、近縁種で交雑しないように注意が必要です。ミントなどは、強健すぎて地下茎で雑草並みに繁殖するため、他のハーブを植える場合は離した方が良いです。
一方、イタリアンパセリやバジル、オレガノは害虫が付きやすいので鉢植えにして移動できるようにしたいのですが、苗は露地植えよりも小さくなるため悩みどころ。
⑦ハーブを植えたあとのこと
ワイルドストロベリーは、見た目が可愛いいうえおいしいイチゴも収穫できるのでとてもワクワクして育てると思うのですが、じつは実をを収穫したあとが大変です。
実の収穫後、ランナーという子苗や孫苗が伸び、孫苗を株分けして世代交代を行うのですが、この苗の数が毎年ネズミ算式に増えていきます。
最初のころは、ランナーから苗が出るという現象が面白いので株分けも楽しいのですが、増えてくるとランナーが膨大に伸び、そのころにはランナーも見飽きているため、かなりおっくうになる可能性が高いです。放置しておくとワイルドストロベリーが肥料を吸い上げてしまい、他のハーブが育たないばかりか増えすぎて放置したワイルドストロベリーにはろくな実が成らないため、注意が必要でしょう。
カモミールは、ローマンカモミールの方は多年草なうえ花だけでなく葉っぱからも良い香りが漂います。
それに対し、ジャーマンカモミールは葉っぱから香りは出なく1年草ですが、精油成分のアズレンはローマンカモミールよりも多く含んでいるため、薬用として割り切って使うことができます。
ディルやフェンネルは根の張り方が浅いため、移殖を嫌います。一度植えたら移動しない方が良いのですが、どうしても移動しないといけない場合は移植後支柱で支えた方が良いでしょう。
また、ミントやシソなど葉っぱを主に利用するハーブは、摘心(てきしん)が非常に重要です。
ハーブの収穫と保存にも書きましたが、摘心を行うと脇芽が伸びてきてもう一度収穫できるようになるうえ、刈ることで上部だけでなく左右にも枝葉が広がるようになるので、収穫量が倍増します。
刈り取ることで風通しが良くなり、虫や病気にかかりにくくなる効果もあるので、刈り渋ったり忘れたりすると、結局虫に食べられたりウドンコ病になったりしてしまいます。博愛精神を出さず、思い切って摘心してください。
花を利用するハーブの場合、コモンマローやナスタチウムは次々と花が咲くので、取り過ぎをあまり気にせず利用することができます。ティーやサラダに、どんどん利用してみましょう。
花が枯れてきた場合は、種ができないように花ガラを摘み取ると 長い間花を楽しむことができます。
ハーブのポイントのまとめ
最後に、ハーブを育てるポイントをまとめておきます。
もちろん、ハーブを細かく見ていけば水やりの部分などは当てはまらないものもありますが、多くのハーブが下記ポイントに当てはまります。
ハーブの生命力の強さが我々の健康へ良い影響を与えるわけですから、全体的にはあまり過保護にする必要がないと言えるでしょう。
ハーブを育てるポイント
- はじめての人は、苗から育てると簡単
- 半日程度日が当たれば、ほとんどのハーブは育てられる
- 乾燥気味にした方がうまく育つので、水やりは楽
- 多年草のミントやレモンバームも楽
- やせた土地で自生していたほど丈夫なので、肥料はあまりいらない
- 土の酸性度が強いとよく育たないので、石灰を中和する必要がある
- 全体的に、あまり過保護にしなくて良い
- アロエやステビア、センテッドゼラニウム、レモングラスは耐寒性がないので鉢植えが無難
- 寒さに強いローズマリーやセージ、ミント、レモンバームは露地でもOK
- イタリアンパセリやバジル、オレガノは害虫が付きやすい
- ワイルドストロベリーは、実をを収穫したあとが大変
- ローマンカモミールは多年草で葉も良い香り
- ジャーマンカモミールは1年草だが精油成分のアズレンが多い
- ディルやフェンネルは根の張り方が浅いため、移殖を嫌う
- 葉っぱを使うハーブは、博愛精神を出さずしっかり摘心を行う
- 花を使うコモンマローやナスタチウムは、取り惜しみしない